粘土板マルチング法による緑化活動

鹿児島大学名誉教授で中国・東北大学の名誉教授でもある野崎勉先生が、日中の社会人と学生と一緒に、2005年から年に2,3回内モンゴル自治区通了市郊外科左翼后旗に広がる“ホルチン砂漠”の一角でモンゴル松による緑化活動を続けている。

6月21日、私も参加し野狼谷で狼を見学した後、通了市内のホテルに宿泊し、翌22日に“ホルチン砂漠”に向かった。バスで2時間半かけて“ホルチン砂漠”に到着。“ホルチン砂漠”にはモンゴル松を使った緑化現場以外に、昨年から野崎先生が独自に開発した“粘土板マルチング法”を適用した現場があり、まずそこ向かう。

砂漠の緑化法としてはストーンマルチング法が良く知られている。この方法だと石が現場に残るため、緑化された後の土地利用に問題がある。野崎先生が緑化に使用する粘土板は、縦80cm、横40cm、厚さ10cmの形状。原料として土、硬化剤として牛糞、補強材としてわらを使い、水を加えて混練し、天日で乾燥して作成する。現在粘土板の作成は、現地の農民の方にお金を出して依頼している。
この粘土板を8枚を1ユニットとして砂上に一定間隔で並べる。設置後、草の種を蒔いておくと、数か月で粘土板の隙間に植物が生えてくる。

1ユニット8枚の粘土板を敷き詰める

設置後数か月後の状況

私がこの粘土板マルチングによる緑化現場に入るのは、3回目。この4月までに野崎先生の手で、広さ1haの半砂漠地域に35,000枚の粘土板が設置されていた。

広がる緑化現場

1年後には牧草が膝の高さまで成長する

“粘土板マルチング法”では、1年後には粘土板は土に戻るので、緑化後の土地利用に問題はない。粘土板には保水性があるうえ、牛糞が練りこんであるので肥料として効果があり、適度な降雨さえあれば半砂漠地域の緑化が一気に進む。現在、粘土板の作成に土を使っているが、野崎先生は土の代わりに、生活排水の処理に伴って発生する脱水汚泥の使用を考えている。日本では下水汚泥は、嫌気性消化された後、焼却処理されている。焼却するのではなく、脱水汚泥を高温たい肥発酵させたものを土の代わりに使用すれば、物質循環に乗った理想的な砂漠緑化が可能となるので、期待したい。
この現場で、参加者が粘土板マルチング板による緑化現場の周辺にモンゴル松を植林した。

モンゴル松の植林

参加者全員で記念写真

この後、近くのモンゴル松による植林がほぼ終えた現場を視察した。ここでは5-8年前に植林したモンゴル松が人の背丈を超える高さまで成長し、以前半砂漠地帯であったとはとても思えない。地下には地下水が走っていて、すこしくぼ地の高度低い現場はモンゴル松の成長が良いが、小高い丘の上に植えたモンゴル松は水分不足で成長が遅れている。

人の背丈以上に成長したモンゴル松

半砂漠であったとは想像できない植林現場

小高い丘ではモンゴル松の生育が悪い。高い木は植林したポプラ。

植林現場に咲く可憐な花

この近くは、モンゴル松やポプラによる緑化が進み、樹間には草原が戻り、放牧が始まっている。

放牧状況

折角の緑化現場が、過放牧でもとの半砂漠に戻ることだけは避けて欲しいと願うばかりである。