12月9日に、太湖を視察しました。
上海から、高速道路1号線を使って、蘇州まで1時間半のドライブ。蘇州国家新区管理委員会環境保護局を訪問した後、太湖を案内してもらいました。
綺麗に整備された蘇州高新区から、太湖沿いに建設中の湾岸道路を走り、上水の取水地点を見学。
太湖の沿岸整備(矢板が気になる)
沿岸に残るヨシ原の群生
太湖は、中華人民共和国の江蘇省南部と浙江省北部の境界に位置する中国五大湖の一つで、鄱陽湖、洞庭湖に次ぎ中国で三番目に大きな淡水湖。その面積は2,250平方km(琵琶湖の約3.4倍)、周囲は400kmと巨大な湖に係わらず、平均水深はわずか2.0m。太湖は長江デルタに位置していて、大運河ともつながり、多くの中小の河川が流れ込んでいる。太湖は、周辺住民約3,000万人の貴重な飲料水源。太湖から流れた川が注ぎ込む淀山湖から、上海市内を流れる黄浦江が発している。
蘇州や無錫には改革開放後多くの工業団地が建設され、急激に都市化・工業化が進んだ。その一方で太湖の水質汚染(富栄養化)が進行し、大きな社会問題となっている。2007年5月には太湖で藻類が大発生(水の華)し、無錫市内では水道水が使えなくなる事態になったことは我々の記憶に新しい。太湖全体のT-N濃度は4.0mg/L、T-P濃度は0.13mg/Lと、湖の富栄養化の目安とされているT-N濃度0.15~0.20mg/L程度、T-P濃度0.02mg/L程度を大幅に越えた濃度になっている。現在、太湖のヘドロ層は1m以上も堆積しているとされ、このヘドロの処理をしないかぎり太湖の富栄養化の進行を防ぐことは難しい。
上水原の取水口近くの看板
上水の取水口と思われるタワー
上水取水口保護区は船が入れないように柵が巡らされている
上水取水口保護区の沿岸の状況(透明度がなく、ぐり石には藻が大量に付着)
上水取水口近くの浄水場
中国政府は、長江の水を流し込むことで太湖の水位3mまで高め、太湖の水質の改善を図っている。(長江から太湖に流し込む水量を、これまでの100トン/秒から150トン/秒に増加させた)。
その後、1994年に完成した全長5kmの太湖大橋を渡って、太湖に浮かぶ西山島にわたり、島から巨大な太湖を実感。
西山島近くの湿原公園(ヨシ原が保全されている)
上海市は黄浦江を水源とする上水道から、徐々に長江に水源を移す事業が進行中で、現在黄浦江への上水道の依存度は60-70%程度にまで落ちているが、黄浦江が大上海市の貴重な水道水源に変わりはない。
太湖大橋を引き返し、蘇州市内に向かって湖岸を走り、2009年に完成した蘇州太湖国家湿地公園を見学。
湿地公園の看板
湿地公園の遊歩道マップ
整備された湿地公園
遊歩道で湿地公園を散策
湿地公園のシンボル・水水車
湿地公園の太湖の水は透明度が高い
湿地公園で震えながら結婚式の前撮り
今回太湖を蘇州市から視察して、この富栄養化の進んだ湖に頼らざるをえない蘇州、無錫、上海の上水事情を考えると複雑な気分である。中国政府が重点的に保護しなければならない三湖の一つとしてこの太湖を指定し重点的に対策を打っている。太湖を汚すのは簡単だが、元に戻すには気の長くなるような時間と膨大な資金が必要になると、行政、住民、企業が共通認識を持つことが求められる。