第4回のInternational Anammox Symposium(IAMAS2019)が大阪で開催された。会場は、関西空港近くの大阪府泉南郡熊取町の京都大学複合原子力科学研究所。11月13日、14日がシンポジウム、15日が施設見学会であった。日本から82人、中国から33人、韓国から10人、ベトナムから5人、タイから1人、合計131人の参加となった。
第1回のIANAS2011は2011年に熊本大学で、第2回のIANAS2013は2013年に韓国ソウル、第3回のIANAS2015は2015年に中国・大連理工大学で開催された。IANASは2年ごとに、日本、韓国、中国の三か国の持ち回りで開催されてきて、第4回は崇城大学の藤井隆夫教授がChairpersonとなって2017年に熊本市で開催する予定であったが、熊本地震の影響で中止となった。
今回、IANASを早く日本で開催して欲しいとの声を受け、アナモックスの研究に精力的に取り組んでいる京都大学複合原子力科学研究所の藤川陽子先生と、私がChairpersonとして第4回のIANAS2019を大阪で開催する運びとなった。東南アジアでアナモックスの研究に精力的に取り組んでいる先生方を組織員会の委員に、関西在住のアナモックスの研究を行っている先生方を実行委員会委員として、1年かけてこのシンポジウムを準備した。
IANASはアナッモクスに特化した世界で唯一のシンポジウムで、今回は、部分亜硝酸化反応、アナッモクス反応、二槽式アナッモクス法、一槽式アナッモクス法、メインストリームへの適用、アナッモクスが関係する生態学の6つのセッションで、京都大学複合原子力科学研究所の大会議室で54件の口頭発表が行われ、併せて19件のポスター発表も行われた。
会場を2つに分けると、十分な発表時間を確保できるものの、全ての発表を聞くことができないことから、当初から一つの会議室で行うことを基本方針とした。今回予想を上回る多くの口頭発表の申し込みがあり、発表時間を15分と短く設定しても、一会場でさばける口頭発表件数は54件が限界で、19件はやむなくポスター発表に回っていただいた。
初日は、複合原子力科学研究所への入構、シンポジウムの受付等で時間が取られ、少し遅めの9時半からのスタートとなった。
IANAS2019の発表会場となった京都大学複合原子力科学研究所会議室
京都大学の藤川先生の開会の辞の後、9時45分から、「部分亜硝酸化」に関する3件口頭発表が始まった。
開会式の司会を担当した京都大学・西村文武先生
開会の挨拶をする京都大学・藤川陽子先生
次いで、11時から昼食を挟んで「アナッモクス反応」に関する13件の口頭発表があった。15時45分からは「二槽式アナッモクス法」に関する6件の研究発表があった。
最初の座長を担当した、中国・山東大学Shou-Qing Ni教授
中国・華南理工大学Xiaojun Wang教授による口頭発表
中国・北京工業大学Zhang Li教授による口頭発表
座長を務める中国・大連理工大学Qiao Sen教授
タイ・カセサート大学Pongsak Noophan副教授による口頭発表
座長を務める東洋大学・井坂和一准教授
京都大学・西村文武准教授による口頭発表
立命館大学・惣田聡教授による口頭発表
大阪府環境農林水産総合研究所・相子伸之主任研究員による口頭発表
㈱タクマの高木啓太氏による口頭発表
熊本市上下道局・四浦良祐氏による口頭発表
座長を務める北里大学・清和成教授
その後、近くの関西空港への連絡橋のたもとに位置する、Star-Gate Hotelに移動して、19:00から懇親会を開催した。
シンポジウムへの出席者のほとんどが懇親会に参加した。司会は、㈱タクマの芹沢佳代さんが担当。藤川陽子先生の開会の挨拶のあと、日本、中国、韓国、ベトナムからの参加者を代表して、大阪大学の池道彦教授、中国・大連理工大学のQuan Xie教授、韓国・釜山国立大学のLee Taeho教授、ベトナム・ホーチミン市工科大学のDan Nguyen Phuoc副教授から祝辞があった。
藤川先生による開会の挨拶
大阪大学・池道彦教授からの祝辞
中国・大連理工大学Xie Quan教授からの祝辞
韓国・釜山国立大学Lee Taeho教授からの祝辞
ベトナム・ホーチミン市工科大学Dan Nguyen Phuoc副教授からの祝辞
乾杯の音頭は、日本・東北大学の李玉友教授にとって頂き、祝宴が始まった。
日本・東北大学・李玉友教授による乾杯前の挨拶
参加者全員がアナッモクスの研究に従事し、しかも学会等で顔なじみが多く、和やかな雰囲気で宴が進んだ。
懇親会の様子
宴の途中で、5人にショートスピーチを頂いた。最初に北海道大学岡部聡教授、次いで遠路米国から参加頂いた米国・農務省農業研究所(USDA・ARS)のMatius Vanotti博士、中国・大連理工大学のQioa Sen教授、韓国・ジョンテク社のYoo Joong Jeon社長、日本・下水道事業団の細川顕仁理事の順であった。
北海道大学・岡部聡教授のショートスピーチ
米国・農務省農業研究所Matius Vanotti博士のショートスピーチ
中国・大連理工大学Qioa Sen教授のショートスピーチ
韓国・ジョンテク社Yoo Joong Jeon社長のショートスピーチ
日本・下水道事業団・細川顕仁理事のショートスピーチ
最後にIANAS2019のChairpersonの古川から閉会の辞があり、三本締めで懇親会が終了した。
古川による閉会の挨拶
シンポジウム2日目の14日は、9時から「一槽式アナモックス法」のセッションがスタート。今回の発表の中では「一槽式アナモックス法」に関する研究発表が12件と一番多く、今後のアナモックスの適用においては、「一槽式アナモックス法」が主流になることを示唆している。
昼食前のKeynote Speechとして、USDA・ARSのMatius Vanotti博士から、宇宙船での排水リユースにアナモックス反応を適用するチャレンジングな研究成果が報告された。
米国・農務省農業研究所Matius Vanotti博士によるKeynote Speech
昼食を挟んで、14:00まで19件のポスター発表が行われ、ポスターを前に活発な議論が繰り広げられた。
ポスター発表の様子
ポスター発表の後、「一槽式アナモックス法」に関する残りの4件発表が行われた。
和歌山県工業技術センター・山際秀誠主任研究員の口頭発表
和歌山県工業技術センター・赤木知裕主査研究員の口頭発表
韓国・釜山国立大学Lee Taeho教授の口頭発表
ベトナム・VAST-IET・Phan Do Hung博士の口頭発表
明電舎・M.Q. Lai氏による口頭発表
座長を務める崇城大学・平大輔准教授
15時からは3件の「メインストリームへの適用」に関する発表があり、最後に「アナッモクスが関係する生態学」に関する7件の発表が行われ、全ての口頭発表が終了した。
終了後に、優秀口頭発表者、優秀ポスター発表者の発表があり、藤川先生から表彰状の授与が行われた。
表彰式の司会を務めた、大阪大学・井上大介准教授
藤川先生から優秀口頭発表賞に選ばれた農業・食品産業技術総合研究機構の和木美代子上級研究員への賞状の授与
優秀発表賞の表彰(1)
優秀口頭発表者の表彰(2)
2日間にわたるシンポジウムの終了に際し、Chairpersonの古川から閉会の辞があり、次回2021年の釜山で開催予定のIANAS2021での再会を期してシンポジウムは閉会した。
古川による閉会の辞
15日は施設見学会で、61人の参加があった。JR天王寺駅に9時30分に集合し、貸し切りバスとレンタカーを利用して、公共下水処理場に日本で最初に導入された大阪市平野下水処理場の嫌気性消化脱離液からNH4-Nを除去する二槽式アナモックスプラント(設計処理量:1,350m3/d)を見学した。
アナモックス処理施設の全景、3班に分かれて見学した。
処理施設のフロー図
処理施設の上部で処理施設の説明を受ける
見学後、昼食を取った後、バスで人工島舞洲に渡り、大阪市の舞洲スラッジセンターを見学した。
舞洲スラッジセンターの入口。建物はフンデルト・バッサーのデザイン。
大阪市の係員から汚泥溶融施設の説明を受ける。
舞洲スラッジセンター見学後、バスで天王寺駅に戻り、16時30分に解散した。
多くの参加者から、良く準備された、実のあるシンポジウムであったとのお褒めの言葉を頂いたことは、シンポジウムをお世話した実行委員会メンバー全員の喜びとするところである。
写真撮影:住友化学㈱・朝子弘之氏