9月26日から30日、中国・瀋陽に出かけた。
今回の出張の目的は、友人の中国・東北大学の朱彫教授が行っているアナモックスの研究指導と大学での講演、それに内モンゴル自治区・通遼市ホルチン左翼后旗・カンジカ(甘旗卡)での植林活動に参加することである。
27日、東北大学機械自動化学院の朱教授の実験室で稼働中の容量6トンの一槽式アナモックスリアクタ(SNAP)の稼働状況を視察し、指導した。実施設を受注した際にすぐにアナモックス汚泥が供給できるよう、このプラントを稼働させている。日本では大学で運転するのはせいぜい0.1トン程度のリアクタ。スケールの大きさに驚くとともに、中国でのアナモックス研究の急速な進展に驚かされる。
稼働中の容量6トン のSNAPリアクタ
余談であるが、中国で急速に普及が進む「シェア自転車」について。4月に瀋陽を訪れた際に初めて見かけた「シェア自転車」。それが今回の訪問では東北大学の構内で沢山の「シェア自転車」が走っているのに驚く。
東北大学キャンパス内の宅配ステーションで見かけた多くのシェア自転車
教え子の東北大学の謝先生に聞くと、とにかく使用料金が安いそうで、入会金の300元を支払い会員になると、最初の数カ月は無料。その後は一回一時間の使用料金がたったの1元(日本円で16円)こんな安い値段で商売が成り立つのか心配になる。教え子の話では、大手が安値攻勢で後発の新興企業の参入を阻止しているとのこと。最近の日経新聞にこれに関する記事が出ていた。アリババとテンセントは豊富な資金を武器に、アリババは「ofo」に、テンセントは「モバイク」に資金提供し、他社を駆逐し、最終的にこの2社のみなってしまったとのこと。新規の事業が儲かるとわかると、アリババとテンセントが出てくる。中国の新興企業の陰にアリババとテンセントがいる。これを「何でもかんでもアリババとテンセント病」と言われているそうだ。ちなみに、札幌にモバイクが進出したそうで、その使用料金は30分50円だそうです。
27日の午後6時半から、学部の3年生、4年生を相手にアナモックス研究の展開について2時間講義を行った。英語での講義を準備したが、学生には無理があるとのことで、教え子の馬永光博士に通訳をお願いした。日本の大学では、このように夜遅く始まる授業はないが、中国では一般的。これも中国の大学生が全てキャンパス内の寮に住んでいるからこそできるシステムである。
28日の朝、東北大学の南門に集合。観光バスで植林に向かう。この植林活動は、鹿児島大学名誉教授で中国東北大学名誉教授でもある野崎勉先生が始めたもので、10年以上の歴史がある。今回は、東北大学の朱先生の研究室の大学院生20人と先生方を含め総勢25名が参加。瀋陽から高速道路を使って内モンゴル自治区のカンジカまで、途中新民SAでの休憩を含め約3時間のバスの旅。
建設中の瀋陽と北京を結ぶ完成が近い新幹線
整備された瀋陽から内モンゴル自治区を結ぶ高速道路(道路沿いの防風林のポプラが大きく育っている)
瀋陽と通了間に建設中の新幹線
昼前にカンジカに到着。
年々賑やかになるカンジカ市街地
2日前にオープンしたカンジカ商業広場
カンジカ商業広場3階のレストラン(経営は瀋陽の業者で味が良く、賑わっていた)
ボーワンホテルにチェックインした後、ホテル内のレストランで昼食。レストランでは結婚披露宴が行われていて、会場の後ろから15人収容のパオの個室の部屋に移動。披露宴のマイクが大きくて耳障りだったが、そこはご愛敬。中国では結婚披露宴を、昼食を兼ねて行うことが多い。カンジカで一番大きなボーワンホテルは、翌28日も結婚披露宴が予定されていた。披露宴が始まる前には、ホテルの前で派手に花火が打ち上げられる。
カンジカで一番大きな傳王大酒店(ボーワンホテル)
ホテル前の結婚式を示すアーチ
結婚式の始まる前に打ち上げられる花火
ホテル前のビル(屋上に太陽光温水器が乗っている)
昼食後に、バスでカンジカ市内から1時間ほどのボルチン砂漠に。これまで、野崎先生が植林を行った地域は、植えたモンゴル松も根づいて育ったことから、今年からは場所を変えて植林することになった。砂漠化の進む前線近くで、植生が少し残っていて、近くに井戸がある場所を、放牧の牛や羊が入り込まないように鉄条網で囲った場所で、今回、150本のモンゴル松を植林した。内モンゴルの植林には、成長の早いポプラも使われるが、値段が高い上、10年で枯れてしまうことから、野崎先生は値段が安いモンゴル松を使っている。寿命は長いが成長が遅いのが欠点で、効果がはっきり見られるには最低5年はかかる。
今回、植える松が3年ものの大きな木であったことから、深く穴を掘らなければならないので重労働であったかが、若い学生の頑張りもあり、1時間程度で植林は終えることができた。植林の詳細については、みずめがねの2013年9月を参照してください。
植林活動に参加した東北大学の大学院生
植林場所に向かう高速道路沿いに植えられたモンゴル松
今年はモンゴル自治区となって70周年にあたる
植林場所近くのトウモロコシ畑(水不足で実がなっていない)
ホルチン砂漠近くのパオの宿泊施設(夏場には砂漠を多くの観光客が訪れる)