撫順炭鉱

今回が2回目の撫順訪問となる。瀋陽市の東方約60kmに位置する撫順市は、撫順炭田を中心に発展した鉱工業都市で、かつては「石炭の都」と呼ばれた。しかし、現在は石炭の発掘量が減少し、撫順の石炭を原料とした化学工業は、大慶からパイプラインで運んでくる石油を原料とした石油化学工業にシフトしている。
前回は15年ほど前に、大連理工大学の楊教授、張副教授と、撫順市の中国石油の工場排水の処理場を視察の際に訪れた。当時は大連から瀋陽まで飛行機便があり(今は新幹線があり、航空便は廃止されている)、瀋陽に泊まり、翌日車で撫順を訪問した。工業都市の撫順は、市内を流れる渾河(こんが)には水が少なく、しかも汚染されて、こんな内陸部の化学工業団地は問題が多いのではと懸念した記憶がある。
この15年間で撫順は大きく経済発展し、現在の人口は230万人。これまでの瀋陽からの鉄道に加えて、路面電車も走るようになり、道路もよく整備されている。市内に入り渾河沿いに巨大なリング状モニュメント(Ring of Life)が目に飛び込む。

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撫順市の巨大モニュメント(Ring of Life)
この巨大なモニュメントは3,000トンの鋼材製で、12,000個のLEDランプが埋め込まれている。朱先生の話では、このモニュメントに余りにも金を掛けすぎて、中央政府からお叱りを受けたとのこと。渾河沿いには高層のアパートが林立している。

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渾河沿いに林立する高層のアパート群(道路向こうに見えるのが渾河)
渾河は農業シーズンで農業用にかなり使って水量が低下しているとのことであったが、15年前よりも水量が多く、河川もそれほど汚染されてなく安心した。
三宝屯下水処理場を見学した後、遼寧城建設院有限公司のスタッフから、下水処理場以外にどこか見学したいところありませんかと聞かれ、中学の社会の授業で習ったことを鮮明に記憶している「撫順の露天掘りの炭鉱」を見たいと答えたところ、近くですから案内しますとの返事。

市内から車で10分ほどに露天掘りの現場を見渡せる展望所「東崗現景台」に到着。

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東崗現景台

展望台からは、世界最大規模の巨大な露天掘りの現場を見降ろすことができる。長さ5㎞、幅3㎞、深さが450mの規模。すり鉢状に露天掘りされていて、掘り出した石炭は大型トラックで、鉄道の集積場に運び、そこから貨車でらせん状の線路を使って地上まで運び出す様子をうかがうことができた。

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先が霞む露天掘りの現場

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谷底(深さ450m)で採炭が行われている

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中央に石炭を運ぶ貨車が

この撫順炭鉱も鉱脈が尽きつつあり、近く閉山されるとのこと。問題はこの採掘現場をどのように活用するかである。このままの状態で放置すると地下水と降雨で水深450mの湖ができることなる。埋め戻すことは非現実的で、撫順市は廃棄物の処分場としての活用を考えているとのこと。それには、地下水を汚染しない防水対策と、浸出液の適正な処理が求められる。

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