2017年4月21日に撫順市三宝屯下水処理場見学を見学した。この下水処理場では一日40万トンの下水が処理されている。処理場の設計を担当した遼寧城建設院有限公司に東北大学の朱教授の博士課程の社会人学生張君が勤務していることからこの見学が実現した。(ちなみに張君は、桂林理工大学の卒業生で熊本大学に交換留学している)
遼寧城建設院有限公司のスタッフ3人に連れられて、この処理場の運転管理を請け負っている中核撫順環保科技有限公司を訪問し、情報交換した後、施設の見学をした。
撫順市三宝屯下水処理場の管理棟
中国の下水処理場の運転管理は民間委託されている例が多い。三宝屯処理場は中国国有の原子力発電大手の中国核工業集団(中核)が請け負っている。(管理棟に中核の看板が架けられている)汚泥処理も含めて下水1m3あたり0.8元(約13円)とのこと。
この処理場は、一期工事で建設された処理施設(20万m3/日)の回分式活性汚泥処理施設と、第二期工事で建設された処理施設(20万m3/日)のA2O法の処理施設から構成されている。
処理場の施設配置図
処理施設を紹介する看板
処理場の全景(右側にSBR,左側にA2O処理施設)
最初、A2O処理施設を見学した。処理は順調に行われていた。ただ、嫌気槽の撹拌機でこれが度々トラブルを起こしているのが問題とのこと。槽内のMLSS濃度は約4,000mg/Lで運転されていた。沈殿池ではスカムの浮上もなく良好な固液分離が行われていて澄明な処理水が得られている。
A2O処理施設の全景
A2O処理施設の沈殿池
処理水はUV殺菌されていた。
処理水のUVによる消毒
処理水の水質はSS濃度は1-2mg/L、COD<10mg/L、T-N<10mg/L、 T-P<0.5mg/Lと極めて良好で、現在は河川放流されている。今後は発電所の冷却水など工業用水として処理水の再利用を考えているとのこと。
次いで、汚泥処理を見学した。余剰汚泥は直接脱水されていた。凝集剤として、PACと石灰を使いフィルタープレスでの脱水。中国製の脱水機で、脱水汚泥の剥離は自動ではなく、作業員が付きっ切りで行われていた。
作業員による汚泥の剥離作業
ろ布の洗浄の様子
ろ布の洗浄は脱水が終わった後に行われていた。(日本製の脱水機では、汚泥の剥離、洗浄は自動で行うのが一般的である。)脱水汚泥は、含水率80%で、一日150トン発生し、埋め立て処分されている。
脱水汚泥
この処理場では遠心脱水機の導入を図るとのことで、すでにその備えつけ工事が行われていた。
新たに導入される遠心脱水機
最後に、SBR処理施設を見学した。ここもリアクタ内のMLSS濃度は約4,000mg/Lで運転されていて、排水流入1時間、反応1時間、沈殿1時間の3時間サイクルで運転され、反応時のDO濃度は1.5-2.0mg/Lとのこと。
SBRリアクタ
SBR施設のデカンタ
これまでに、沢山の中国の下水処理場を見学していたが、この処理場は非常にうまく運転管理されていて、北京市高碑店下水処理場に匹敵するレベルであった。