ホーチミン市のインフラ

首都ハノイとホーチミン(HCM)を結ぶのがベトナムの大動脈国道1号線。HCM市近郊ではその整備が急ピッチに進んでいる。
写真はHCM市近郊の1号線の様子。片道3車線の舗装道路、写真右側の広い単車専用道路、植栽された中央分離帯が続く。

DSC_0440

車道と単車の走る道路が区別されている

DSC_0441

このような高架道路で交差点での渋滞が緩和された

DSC_0443

中央分離帯の左に、建設が進む都市交通の高架鉄道

また、現在、1号線沿いにHCM市と郊外のバーソンと中心地ベンタイン市場の間19.7㎞を結ぶ「ホーチミン市都市鉄道」の建設が日本のODAを使って進んでいる。ベンタイン市場とスオイティエン間は地下で、スオイティエンとベンタイン市場の間は高架で結ぶもの。この間に14駅(地下:3か所、高架:11か所)が設けられる予定。
高架部分は、住友商事と地元ゼネコンとのJVで、地下部分は清水建設と前田建設工業とのJVで進められている。車両・電気・通信・信号システム、軌道、開業後5 年間の保守については国際競争入札の結果、日立製作所が受注している。
高架部分の工事は順調に進んでいて2017年には完成の予定。地下部分は工事が難航していて2019年2月の完成を目指している。ハノイ市は、高架部分を先行して開業する予定。
この都市鉄道の完成で、HCM市の交通渋滞が緩和される予定で、HCM市の一層の発展が見込まれている。

一方、ハノイでは、2013年7月9日の水メガネでも紹介したが中国のODAで「ハノイ都市鉄道」としてモノレールの建設が行われている。本来ならば、すでに開通している時期であるが、工事中に死亡事故が相次いだ他、追加工事費等の問題で工事が思うように進んでいない。
この工事の遅れは許せないようで、HCM市では都市交通の建設工事が順調に進んでいることと対比して、ベトナム人の中国への不満は非常に大きい。この話になると、ハノイではもちろんであるが、HCMでもベトナム人は声を荒げて中国を非難し始める。
今回、Vietnam Academy of Science and Technology(VAST)翼下のInstitute of Tropical Biology副所長のLe Cong Nhat Phoung博士の案内でHCM近郊のHiep Phuoc工場団地の排水処理施設を見学した。この工業団地には、古紙再生工場、染色工場、皮革工場、と殺場などが入っているとのこと。 各工場は除害施設で受け入れ水準まで排水を前処理した後、共同の排水処理場に排水する。この処理施設は、計画流入排水量6,000m3/dで設計されているが、現状は2,500m3/dの排水を受け入れて処理している。
排水は硝化―脱窒循環法で運転されていた。

DSC_0452

凝集沈殿池

DSC_0445

生物処理槽(手前の2池は硝化槽)

DSC_0450

最終沈殿池(スキマー付)

00620001

処理水放流口(流入水の色に比べ、良く処理されていることがわかる)

流入排水はPACで凝集沈殿処理された後、容量1,100m3の脱窒槽に流入する。後段の容量2000m3の硝化槽から循環比2.0で循環返送される硝化槽混合液中のNO3-Nが流入排水の有機物を水素供与体として活用して脱窒処理される。この処理で、流入水(COD 800-900mg/L、T-N平均80mg/L、塩分濃度1,000mg/L)が、COD<80mg/L、T-N<30mg/Lに適切に処理されていた。処理水量、COD、SS、pHが自動計測されて、日本と比肩するレベルには驚かされた。  処理で発生する余剰汚泥は脱水処理された後、コンポスト業者に処理を委託しているとのこと。工場排水であるので汚泥には重金属が含まれている可能性が高く、コンポスト肥料の安全性が懸念された。 ベトナムには283の工業地区があり、そこから発生する産業排水の量は約100万m3/dと見積もられている。半分以上の工業地区、工業団地で集中的な排水処理がなされていないのが現状であり、今後この程度の工場排水の集中処理が一般的となり、ベトナムの工場排水による水環境汚染が無くなることを期待したい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です