中国・内モンゴル自治区へのオオカミツアー

2019年6月20日―22日に鹿児島大学名誉教授の野崎勉先生が企画した、内モンゴル自治区通了市カンジカでの植林とウズムチン野狼谷でのオオカミ飼育施設を見学するツアーに参加した。野崎先生は昨年日本オオカミ協会南九州支部を立ち上げ、支部長に就任している。今回は支部のメンバーが中心となったツアーで、18人が参加。(女性が9人、80歳代が2人、70歳代が11人)これに中国・東北大学の機械自動化学院の教官3名、大学院学生7名加わり、合計28人のツアーとなった。

20日の午前8時に瀋陽市駅前のホテルをバスで出発。高速道路を3時間かけて、通了市カンジカに到着。傳王大酒店(ボーワンホテル)にチェックイン。昼食後、砂漠の中の大自然原生林・大青溝(4A級の国家級旅遊景区)を見学にバス移動。大青溝までの高速道路沿いは緑化が進み、今年は雨も多かったこともあり、とても砂漠化が深刻な地域とは思われない。砂漠の中のオアシス大青溝には、これまで何度となく訪れている、5A級の国家級旅遊景区への格上げを目指し、道路や公園内の施設整備が進んでいる。今後の益々観光客に人気が出ることを期待される。

砂漠の中に出現する巨大なオアシス・大青溝

大青溝内の木漏れ日の回廊

大青溝の底部に出現する清流脇に整備されたウッドデッキ

ウッドデッキで記念撮影((前列中央が野崎先生)

5A級の国家級旅遊景区への格上げを目指し、道路工事が進む

21日、ウズムチン野狼谷の飼育施設の向けて出発。カンジカから約600㎞をバスで走る。バスは若い運転手がオートドライブモードで100km/hを守り、1-2時間おきにトイレ休憩を挟みながら進むので時間がかかる。途中、通遼市の管轄で通遼市から北西約350kmに位置する炭鉱の街「霍林郭勒市(ホーリンゴル市)」で昼食。霍林郭勒市は炭鉱の街として1893年に建設され、人口は現在約11万人の活気にあふれている。

露天掘りの炭鉱

石炭を運ぶ貨物列車と遭遇

石炭火力発電所

発電の温排水を利用した温水プール

昼食後、バスで広大な草原の中の一本道を進む。草原の丘の上には風車が林立し、送電線が草原の風景を害している。

高速道路わきに広がる大草原と遊牧民のゲル

大草原の丘に建つ風車群

15:00にやっと野狼谷に到着。

野狼谷の全景

入園して、マイクロバス2台に乗り換え、広大な草原内に設けられた広さ約1haの放し飼いゲージで飼育されているオオカミを見学。

ゲージの向こうにオオカミが放し飼いになっている

前を走る運転手が、ゲージ内に入る前に生きた鶏を捕まえ、それを片手に窓からぶら下げて走ると、早速数十匹のオオカミの大群がマイクロバスを追いかけてくる。本当に鶏をオオカミの中に放り投げるのかと思いきや、今回はオオカミに見せびらかすだけで持ち帰った。我々の前の観光客のグループの時は、投げ入れたみたいで、オオカミに食べられた鶏の羽が散乱していた。

鶏に釣られてオオカミが集まる

一斉に運転手の持つ鶏にくぎ付け

なかなか鶏を投げ入れてくれないので半分あきらめ顔のオオカミ

ここで飼育されているのはユーラシアから北米の森林や草原、半砂漠地帯などに広く分布するハイイロオオカミ。分布する地域や餌の状況で大きさに差があるが、平均20-25㎏とシェパードを少し小さくしたサイズ。広いケージの中で餌付けされていることもあり、飼育人には慣れている。一般の観光客は柵を出るまでマイクロバスの外に出ることはできない。

飼育員と戯れるオオカミ

オオカミの巣穴

野崎先生が4月に下見でここを訪れた時は、1パック10匹ほどのオオカミゲージの中で飼育されていっていたとのこと。2-3か月でこれほど増えたとは思われず、意図的に夏の観光シーズンに向けて多くのオオカミを放したと思われる。この狼谷には、放し飼いのオオカミ以外に、展示用に大型の黒狼が飼育されていた。

大型の黒色オオカミ

狼谷は周辺の広大な草原観光と相まって、観光施設として人気が出ているようで、敷地内には、乗馬施設、展示館、宿泊用のゲル等が整備されていた。

準備中のオオカミのモニュメントと展示館

宿泊用のゲル

オオカミは、分布域が広く、個体数も多いことから絶滅の恐れはないとされている。日本のようにオオカミが人の手で意図的に絶滅された地域では、食物連鎖の頂点に立つオオカミがいなくなったことからシカやイノシシが増加し、林業や農業に大きな被害が出て大きな社会問題になっている。現状はハンターによる個体数コントロール(狩猟圧)に依存しているが、ハンターの数が減少していて効果は限られる。長期的な対策として、アメリカ・イエローストーンやアイダホ州では、オオカミの再導入に成功していることから、オオカミの導入による森林生態系における食物連鎖の復活が提案されている。
野狼谷を見学して、通了市に帰る途中に、草原の頂きに立つ巨大なチンギス・カンの石像を見学した。ここも多くの観光客で賑わっていた。

チンギス・カン(後)とフビライ(前)の石像

草原で記念撮影する観光客

ここから、ホーリンゴル市を経由して200㎞離れた通了市に。通了市内のレストランで夕食を済ませ、碧桂園大酒店にチェックインしたのが夜の11時。この日の走行距離は、900㎞を超え、それはそれは疲れた、長い、長い一日でした。

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